コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。
父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY 「Maiden Dreamer」の一瀬ソラコさま
COLOR
緑の中に囲まれていると、どうしてだか懐かしい。わたしが生まれて育ったところは、一面砂の世界だ。植物はすぐに枯れてしまうし、育ったところで数が少ないから、かわいそうだと思う。ひとりぼっちだから? それが自分のようだから? わたしはひとりでもなければ、寂しくもないけれど、たまに偽者のような気持ちになるのは、否定しない。
静かな緑の中でわたしはその人を待つ。
同盟国であるこの国の隠れ里、つまりは木の葉の里に生まれ育ったその人は両手をポケットに突っ込んで、眠そうな顔でやってきた。わたしは立ち上がって、お尻についた草を軽く払ってから、一礼。その人は答えるように片手を挙げる。
「任務は?」
「終わりました。今日は木の葉でお世話になって、明日出発します」
「そうか」
わたしたちがここで顔を会わせることになったのは、わたしが呼び出したからでも、この人が呼び出したからでもなく、先ほど偶然出会った山中上忍の計らいだった。彼女はわたしたちの事情をよく知っている人間のひとりだ。
——そういえば今日の午後から、あいつ空いてたわよ。
その言葉が始まりとなり、わたしは発言する間もなく話は勝手にどんどん進んでしまっていた。そしてこの状況なのだ。
「木の葉に来るの、今日で5回目だろ」
「ええ。よく覚えていますね」
「まぁ、外交関係の書類も何度か見てたから」
うわさによると、この人はズバ抜けて知能が高いと聞いた。カンクロウおじさまにも、その話は聞いたことがある。ただわたしには、いまだにそれが信じられずにいるのだけれど。
「悪いな」
「なにが、ですか?」
「どうせいのに無理やり連れてこられたんだろ。俺もそうだったし」
「まぁ、……そんな感じです」
同意をしてしまっては、まるで山中上忍が強引な人だと言っているようで申し訳ない。けっしてそういうつもりではないが、否定できないのも、事実。
とりあえず、このどこまでも続くような緑の絨毯の上に並んで座り、少しずつ会話を始めてみる。主に任務のことを。それ以外に話題が見つからなかったのだ。わたしはこうしてこの人、木の葉の奈良上忍と話すのはこれが初めてのことだから、何を話せばいいのかもよくわからなかった。もう5回もこの任務を任されているのだから、さすがに会ったことはあるけれど、挨拶程度にしか話したことはなかった。
ふと、話は逸れて、彼はこんなことを言い出した。
「もったいねぇな」
わたしは意味がわからなくて首を軽く傾ける。その様子を見て、彼はわたしの髪を指さして「それ」と言った。
「俺の色、取っちまって」
わたしの髪は、黒色だ。写真でしか見たことはないけれども、母さまの髪はきれいな金髪だった。たまに想像してみる。風になびいて揺れたら、どんな宝石よりもきっときれいなのだろう、と。わたしは今の黒髪でも十分すきだけれど、ごくたまに、母さまのような金髪だったなら、と思うことがある。でも。
「母さまは、わたしの黒髪がすきだと仰っていたそうですよ」
「ああ、確かにそういや羨ましがってたな」
彼の右手が伸びてきて、あと数センチでわたしの髪に届くところで、その手を引っ込めた。急には慣れないのだろう。わたしだって、あのまま触れられていたらどうにかなっていたかもしれない。だけどやっぱり、触れられてみたいと思った。生まれて1年しか一緒に居れなかった母さまの手の温度は、当然もう覚えているはずもなくて、今、目の前にいる本当の父親である彼の温度も、知らないのだ。
わたしの中には、どの温度も存在しない。
「でもまぁ、」
空のどこかを見上げながら、彼は独り言のように言う。
「その目はあいつので、良かった」
彼は、過去何度か見た中で毎回どことなく仏頂面で、カンクロウおじさま曰く「あほ面あほ面、ってテマリがいっつも言ってたじゃん」。けれど微笑むと、安心できるようなやさしい顔になることを初めて知った。その横顔を見ながら、ああ好きだな、と思う。母さまもきっと、同じことを考えていたのだろう。否、そうに違いない。母さまのことは何も知らないけれど、それだけは言い切れる妙な自信があった。
なぜならわたしは彼女の娘なのだから。
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松木さまより コジカまんが戴きました!
皆さまのおかげでサイトが潤っております!コジカ作品をお持ちでしたら、ぜひぜひ砂漠の花に水をやってくださいませ〜
nekotemarin@gmail.comまでお待ちしております☆
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