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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY あしまだ さま







[A crybaby]






「砂の使者さんか」
里の大門の手前、樹上に佇んだ少女を訝しげに見る俺に振り向いた碧眼。
唇の端から煙草が落ちていく。
「…テマ…」
「奈良上忍ですか。」
黒髪に似合わないその碧眼を細めて答える少女。
「そうだけど。」
「私をぽかんとした顔で見る人がいたら奈良上忍だと風影様が。」
風を纏いながらすとんと舞い降りる。
ったく、ひでえ言い草だな我愛羅は。
「じゃあ」
「ええ、娘です。」
テマリとの日々が鮮やかに蘇る。軽口を叩き合い始まった幼い恋。命を賭して守り合った森、お互いの想いに気付いた夜、そしてすべてを求め、愛し合ったことを。
「テマリ…さんは風の大名に輿入れしたと聞いている。」
俺は煙草を拾うため俯いた。くっそ自分が今どんな顔をしてるのか判らねえ。
「確かに。」
「姫のお前が何故忍に?」
「嫡男である弟が産まれましたので私は五つの時から叔父上の元で育ちました。」
「…(カンクロウの奴、んなこと今まで一度も)」
「私はコ…コマチと言います。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
少女のまっすぐな瞳に見据えられて、俺はどういう表情をしたらいいのか全く想像がつかなかった。

向かい合うふたりを甘栗庵にいた親友が静かに見ていた。
「ちょっ、ちょっとチョージ、あの子!」
「うん、ソックリだね。」
「「シカマルに!」」


少女と別れた俺は火影室の扉を叩いた。
「六代目お話が、」
「ん~どうぞ~。」
少し間の抜けた返事を待って部屋に入ると中には五代目と六代目が座っていた。
「あれ五代目、お久しぶりっす。何かあったんですか?」
「ちょっと調べものだ。自来也に頼まれてな。」
こちらをちらりと見た五代目は相変わらずの化けっぷりだ。今じゃいのやサクラの方が完璧に老けてるっつーの。
「で、なんの用?」
額当てで片目を隠した六代目は俺の方も見ずに聞く。
「任務変更のお願いに…今来てる砂の世話役をやらせてもらえないかと。」
へ、と俺の方を見ると
「そりゃ上忍の仕事じゃないでしょ。」
そんなに楽しそうに断らなくてもいいだろーが。
「休暇扱いでも構わないんで。」
「シカマル」
五代目が書類から目を上げて言った。
「会ったのか?」
誰になんて聞かなくても判っている。
「はい…」
「どうだった?」
「…似てますね。というか、五代目は知ってたんですね、あいつの子が忍になってるって。」
「あぁ、知ってたよ。」
やっぱり。
「なんで俺に…」「風影から口止めされてたんだ。しょうがないだろう。」
不穏な空気を裂くようにまあまあと六代目が言った。
「いいよ、任務変更の件は。但し休暇扱いね。木の葉丸には俺から伝えるから明日から代わってやって。」
あぁそうそうと六代目は机の上をガサガサと探り
「その代わり、この暗号解読、明日まででよろしく。」
片方の目を三日月にしながら分厚い紙の束を手渡した。
今夜は眠れそうにない。
もっとも、どちらにせよこんな気持ちでは眠れそうになんてないから、ちょうどよかったのかもしれない。

「…あの様子じゃ気づいていませんね。」
「まったく、、あいつはこういうことにはてんで頭が働かないねぇ。」
頬杖を付き、はあっと大きなため息まで吐き出した。
「でもどうしてわざわざ偽名まで。」
「思うところがあるんだろう。コジカはもう立派な大人だよ。」


「しかしカン兄も人が悪いよな。俺にくらい教えてくれてたってよかったのに。」
合同任務を終えたふたりは、ちょうど砂と木の葉の中間地点に当たるこの街で遅い食事代わりに酒を酌み交わしていた。
「まあそう言うなって。」
カンクロウはがっしりとした体躯とは不釣合いに繊細な指と手のひらでガシガシと赤丸の頭を撫でている。里が違っても仲のいいこの二人は、合同任務の機会があるごとに親交を深めていた。
「お前に話したらすぐ奈良のとこまで伝わっちまうじゃん。」
「だけど水くせえよ。」
キバはまだふてくされた様子だ。
「あれからもう12年か」
好物のジャーキーを薄めのバーボンで流し込んで不意に言った。
「姉ちゃんは元気にしてんのか?。」
「大事にされてるし、結構楽しくやってるみたいじゃん。下は双子だから大変みたいだけど。」
家族4人が写った真新しい写真を見せた。恰幅のいい四十代の男とやんちゃそうなふたりの男の子、微笑む金髪の美しい女性。
ぐいっとストレートのジンをあおりながら答えた。
「真面目で子煩悩な、いい人だよ、あの大名は。民の信頼も厚いから領土も安定してるし。」
時計の針は真ん中で重なり、3時間後には出発しなくてはならないことに気づいてふたりと一匹は店を出た。
「…もう、会ってっかな。」
「あぁ、昼には着いてた筈だからな。」


翌日、約束した時間より随分早く到着したというのに、少女はもう宿の前の広場に座っていた。優しい瞳で何かを見つめている。…写真?
「早いな」
「奈良上忍?」
小さな声でおはようございます、と言うとあわててそれをしまい込んだ。
「あぁ、木の葉丸と交代したんだ。あいつ風邪ひいちまって。」
「そうですか。」
伏し目がちな碧の瞳は強い意志の表れか。さっきは優しい眼差しで何を見つめていたんだろう。
「…てますか?」
「へ…」
「そんなに似てますか。母様に。」
「あぁすまない。」
不躾に見つめてしまっていた。
「瞳がよく似てる。雰囲気も…」「私は父に似てると言われます。叔父上も風影様もそうおっしゃいます。」
「そうか。」
俺の知らない少女の父に?
何故か少女はくすりと笑った、ような気がした。
「気になりますか?。母様と父のこと。」
「…」
「奈良上忍とは個人的なお付きあいがあったと聞いていますので。」
まるであそこのケーキはおいしいのよ、とでも言うようにさらさらと少女は言葉を紡ぎだした。
ちょっとストップ。
昨日からの24時間で俺はものすごい量の新情報を処理している。
この子のこの黒髪はつまり…
「…何も知らなかったのは俺だけってことか。」
碧の瞳はまっすぐに俺を見ていた。
「母様とは屋敷を出て以来、一度も会っていないし話したこともありません。だけど。」
少女は首にかけたお守りの中から折りたたまれたそれを取り出した。
セピア色に褪せた、写真。
「…私と離れるときに宝物だと言ってこれを渡してくれました。」
手渡されたそれに写っているのはまぎれもなくあの頃の俺だ。
「…これは…」
少女が手のひらをくるりと回し、裏返すように促した。
視界がみるみるぼやけていく。
きっとテマリならこう言ったに違いない。

『いい男になったか?、泣き虫君。』
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