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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY「and I love you...」のmimsさま








切なさの向こう側
〜あのとき何ができたかじゃなくいま何ができるかを考えるべきだった〜








あの時
私がもしも...


木の葉があんな風に色付くものだなんて、私は知らなかった。
色を纏った樹木があんなに美しいものだとは知らなかったんだ。
通り抜けていく風は爽やかな陽気を孕み、そして適度な潤いをもたらす雨の存在。
のびやかで穏やかで温かい風土を、まるでお前のようだと私は思っていたよ。
そして、お前の想いがどんなに強いものであったか・・・私は、気付かない振りをした。


さらっ、さらっ・・・
さくっ、さくっ・・・


自らの踏みしめる足元からの音以外は何も聞こえない この砂の大地。
ただ じりじりと照り付ける陽射し。
熱と砂を乗せて、吹き荒れる熱い風。
陽を受けて砂の表面から立ち上る水蒸気
それらだけが此処での装飾。

あの国となんと違うのだろう・・・
緑萌ゆる樹木も無ければ、爽やかな風も無い。大地を潤す雨の恵みも無い・・・
同じ様に広がる天上の空だけが、唯一無二の共通のものだ。

あいつも今頃、この空を見上げているだろうか・・・
私を思い出してくれるだろうか。


二人の間に横たわる深い谷を、同じ様に嘆いてくれるだろうか


今日は夕陽がきれいだ。
重なり合う厚い雲の隙間から漏れる、沈みゆく橙色の光。
照らされて同じ色に染まる雲。

アイツもこれを見てくれていたら良い。
あの頃と変わらない表情で、きっとこれを見ているだろう・・・
そう思った刹那、掌が痛む。
心が切なさで満たされた時の常、右の掌が締め付けられるように痛むのだ。


私はただ、茜に染まりゆく空を眺めているだけだというのに・・・


アイツがいつも空ばかり眺めて呆けているから、
空を見上げるとアイツが浮かんできてしまうじゃないか。
私の意識は空とお前を結び付けてしまうじゃないか。
どうしてくれるんだシカマル・・・


シカマル。
あの時
もしも私が
お前の傍に居る事を選ぶことが出来ていれば・・・

あの時もしも
もしも・・・


シカマル
幸せに暮らしているか?
愛する者は出来たのか?
甘やかな仕草で誰かを泣かせてはいないか?
遠い記憶に苦しんではいないか?


シカマル
あの時
私がもしもお前に本当のことを話せて居れば・・・

もしも
その勇気があれば・・・
そしてそれが許せるほどに私の心が強ければ・・・
私がそれ程に我儘になれていれば・・・




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


遠くから覚束ない足取りで 駆け寄って来た幼い少女が
私の脚に飛び付く。

柔らかく艶やかな髪を乾いた風になびかせて、言葉もなく私の瞳を覗きこむ。
その粒羅な2つの光は、限りなく澄んでいて美しく輝く。



———艶やかな髪は、漆黒にたゆたい

———澄んだ瞳は翡翠に光る・・・



なぁ幼子よ。
お前の問いにきちんと答えられぬ母を許せ。
愚かな母はアイツを愛していたのかどうかさえ、分からないのだ・・・


あの国に居るのは心地よかった。 そして、まるであの国そのもののようなアイツに抱かれるのは幸せだった。
それだけは覚えているが・・・
それを思い出す時、心の柔らかく敏感な所を掻きむしられるように胸が痛むのだ。
引っ掻かれた部分はいつまでも膿を持ち続け、それが治まるのには随分長い時間がかかる。


なぁコジカよ。
お前の名を呼ぶ度に、切ない記憶が蘇る・・・
顔を歪める母を許せ。


聞くたびに辛い想いをすると分かっていて、それでも・・・
お前にその名を付けたのはこの母なのだから。
どこかにアイツの面影を、ほんの少しでも感じて居たかったのだ。
お前の中にアイツの気配を感じて居たかった。


コジカ、コジカ・・・
お前のその柔らかい漆黒の髪をそっと撫でる度に・・・
母の胸がどれほど躍るのか知っているか?


ああ、私はまだアイツのことを想っている・・・
お前のその髪を・・・漆黒に煌く滑らかな髪を、アイツのそれに無意識に重ねて見ている。
その度、意識する哀しい事実。私たちはもう二度と出会えない・・・


コジカ。
父さまの事は聞くな。
話してやりたい事は胸に溢れているが、きっと話す度に涙が流れるのだ。
母の泣き顔は見たくないだろう?


「もしも」だなんて
過去の己を責める台詞・・・
私には似合わない。


私はただ前を見て歩く。
過去を振り返らず、今と未来だけを見つめて。
ただ真っ直ぐに前を見て歩いていくだけだ。


コジカ。
私はこの先、お前の手を引いてはやれない。
身勝手な母を許せ。
お前を見るたびに、この胸が抉られるように苦しいのだ。
あの男を愛したと、そして自ら別れを選んだと、お前に話してやれるのはまだ先だ。


私にはいま何が出来るのか・・・そう自分に問いかけながら、ただ前を見て歩き続ける。


「テマリ母さま。私、強くなる・・・」


そう言って笑う我が子の顔を見つめながら
真っ直ぐに、まっすぐに歩いて行く。


私達母娘、各々の未来へ。

陽炎の向こう、私達の居場所へ向かって。




fin
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