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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY「and I love you...」のmimsさま

[切なさの向こう側]切なさのこちら側]の後日譚。

*連載作品(全5話)











『切なさの果て 001』








月夜の淡い光を受けて輝く白い肌。

僕が出会った彼女は、前評判から呼び起こされるイメージとは対局にある、儚げで美しくただ懐かしい印象の女性だった。





何故そんな印象を受けたのかは、親父とお袋の「「それにしても本当にシカマルにそっくり」」って噂話を聞くまで全然分からなかった。

ただ、光を受けて艶やかに煌めく漆黒の闇の様な長い髪と、きめの細かい白く反射する滑らかな肌、そして翡翠の様に輝きを放つ碧眼に、たった一瞬で僕は心を奪われた。

僕より少し歳上らしい彼女は、風の国の外交任務で木の葉へ初めて訪れたらしい。

生まれ育った砂の里とは余りに違うこの里に、好奇の目を注いでいる様子だった。

泊まっている宿を一人で抜け出し、誰かを探していたのかもしれない。

父と母の話から察するに、彼女は、僕の尊敬する奈良上忍の血を引く女性らしい。

奈良上忍は、僕の両親の幼馴染みで、次期火影の名を噂される程の切者だ。

見た目だって男の僕が惚れ惚れするほどの端麗な様子で、何故彼が妙齢になっても結婚しなかったのか、ずっと僕は不思議に思っていた。



彼女が奈良上忍の娘だから、最初に見た時あんな風に懐かしい感じがしたんだ、きっと・・・



『砂漠の花』というふたつ名で呼ばれている彼女は、砂の里きっての敏腕くノ一で、情け容赦ない冷たい女性だ・・・という噂だった。

なのにあの夜僕が見た彼女は、儚げで今にも崩れ落ちてしまいそうな程に繊細なただの女に見えた。



それは、哀しみを背負わざるを得ない定めに生きるからなのか、

それとも僕の眼に無意識に掛かっていたフィルターがそう見せたのか、

その時の僕にはまだ分からなかった・・・









その2ヵ月後に、僕は任務で砂に行くことになった。

同期3人組のスリーマンセルの任務で、砂の里に入る前の日の夜、僕はまた忘れられない光景を見た。



砂漠の外れに、あの日の彼女が立っていた・・・



さらさらと流れ落ちていく砂は彼女の周りを取り巻いて、冷たい夜風に乗り空中を舞いながらきらきらと光っていた。

その細かい光の粒子を纏って、まるで彼女自身が華やかに輝きを放っているように見えた。

美しく儚げな立ち姿は、見る者全てを魅了する力を宿しているようで、俺達三人はその様子にすっかり見惚れていた。

宵闇の深い青紫色の空間で、優しい色を注いでいる月光を浴びて、まるでそこだけが別の世界であるかのように、彼女の姿は浮き立っていた。



その姿を眼にして、ただ懐かしいと思っていた筈の彼女の存在が、僕の心の中にすっかり巣食っている事に気付いてしまった。

息苦しくなるような不思議な感覚を呼び覚まされて、僕は初めて感じたその感情に戸惑い、怯えていた。

そして、それとは裏腹に胸が高鳴っていた。

食べ物を咽喉に通すことさえも困難なほどの切なさに、吐き気をもよおしそうな気がした。ただ、苦しかった。

いつの間にか、僕の心は彼女に囚われていた・・・





彼女の名前を知ったのは、その翌日のことだった。



———コジカ・・・



その名を聞くだけで、ドキドキした。

頭の中だけで彼女を呼んだ——コジカ——そう唱えるだけで、僕の動悸は激しくなり、胸が苦しくて堪らなかった。

僕が初めて感じた“恋心”だった。

と、今は思う。

その只中にあったあの頃は、少しも自分や周りの環境を客観的に見られなかった。

苦しい、そして彼女を見たい、言葉を交わしたい、触れたい・・・



それからの毎日、僕はまだ言葉を交わしたことすらない彼女のことばかりを考えて過ごした。

僕の脳内で彼女の像はだんだん膨らんで、形を作っていった。

幸せで、切ない時間を幾夜も過ごした。



———でも、その時の僕は この先の未来にも永遠に彼女を手に入れることが出来ない事なんて、気付きもしなかったんだ・・・











* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *











「それにしても、アンタもすっかりおっさんになったわねー。

一体いつまでテマリさんの事を引き摺って生きていくつもりよ!?」



「うっせーな。大きなお世話だっつーの。俺がいつまでも同じ気持ちで居て、

何がわりぃんだよ?」



「いのちゃん、もうそんなに煩く言わないであげてよ。

シカマルにだってきっと自分の考えがあるんだろうし、ね」



「そうなんだけど・・・いつまでもウジウジしてるアンタを見てると

苛々すんのよ。いい加減にしなさいよって言いたくなっちゃうの」



「いのもちょっとはチョウジ見習って、思い遣りっつうもんを学べよな

俺だって、別に好きでこうしてる訳じゃねぇんだぜ」



「うん。そうだよ、シカマルは賢いもん。だから、ちゃんと先が見えて

やってる事なんだよ。いのちゃんはシカマルのこと全然分かってないんだね?」



「っくぅ、腹立つ。でも実際はただ思い悩んでるみたいにしか見えないわよ。

今のアンタ見たらテマリさんも愛想尽かしちゃうわよ、きっと」



「・・・俺にも先のことは、あんまり見えねぇ。でも、忘れられねぇんだ。

特に、2年前にコジカに会っちまってからは余計に苦しくて。

アイツがどんな想いでひとりで子供を産んだのかって思うと、堪んねぇんだよ」



「・・・そうよね。テマリさんアンタに黙ってアンタの子を産んだんだもんね。

女としては、それ以上に辛いことってない気がするわ。私も一人だったら、

きっとあの子を産む勇気なんて持てなかったもの」



「いのちゃんのことを一人になんて、僕が絶対にさせないよ!

ずっと傍に居て、守っていくって決めてるんだ。いのちゃんもあの子も」



「・・・へいへい、お熱いこって。俺はお邪魔みてぇだから、そろそろ帰るわ」



「「じゃぁね、気を付けて〜」」





俺は、ふたりの姿を見てるのがちょっと辛くなって、その場を後にした。

あいつらは色々あったけど今は一緒に居て、そして子供も授かった。

そして、仲良く親子三人で暮らしてる。

きっとそれは当たり前の事なんだろうけど、俺には遠い夢だ・・・











* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *











めったに此処には来ないコジカが、私の所へ尋ねてきた。

我が娘ながら、歳を重ねますます美しく賢しくなる。

翡翠の瞳、漆黒の髪・・・砂の里では『砂漠の花』というふたつ名で呼ばれ、能力を買われて暗部に身を置いているらしい。



———きっと、この子はもう私より強い・・・



そんな事を思ってコジカを見つめていると、彼女が唐突な様子で口を開いた。





「2年前に、父さまに会いました」





そう言った時、コジカは嬉しさと切なさの入り混じったような複雑な表情をしていた。

それは、まるで女性の顔だった。

この子も来年は16歳だ、私があいつと会った歳に追いついてしまう・・・

そう思ったら、二度と口にはすまいと自らの心の中で封印していた筈のあいつの事を、つい問うていた。





「奈良は、あいつは元気にしていたか?」



「えぇ、とても。素敵な深みのあるお姿をなさってました」





あいつの顔を最後に見てから、16年と数ヶ月。

年を重ねるごとに艶を増して、きっとますます流麗に男臭くなっているんだろう。

切れの良い頭脳でたくさんの経験を己の糧にして、その身の内にある全てのものに裏打ちされた年輪が刻まれていることだろう。

耳触りの良い声はますます低く掠れ、鼓膜を快く刺激する響きを零していることだろう。

あれからまた、少し大きくなり、その広い背中にたくさんのものを背負って美しく強くなっていることだろう。



私がそんな事を考えていると、コジカは続けて口を開いた。





「まだ、どなたとも結ばれていらっしゃいませんでしたよ。男も盛りなのに。

ところで・・・母さまはいつまでお独りでいらっしゃるおつもりですか?」



「・・・・」



「私、勝手かとは思いましたが、火影さまに母さまの事を少しご相談して参りました」



「何を馬鹿な事を!」



「いいえ、そのような事はありません。

だって火影さまは快く承諾して下さいましたわ」



「・・・何を頼んだのだ?」



「母さまが火の国へ移り住んでも構わないか?・・・と」



「・・お前っ」



「いいえ。何も文句は言わせません事よ。

これは風影さまも・・・我愛羅叔父様もご承知の上で行ったことですわ」



「・・・で?」



「後は、砂の上層部の役員会議を通過しさえすれば、母さまはいつでも木の葉へ

お発ちになれますわ」



「そんなに勝手なことをよくも・・・

でも、奈良が私を受け入れるとは限らないだろう?」



「大丈夫です。奈良上忍・・・父さまのお顔を見れば分かります。

誰も娶られてはいない事と、私と出会った時の仕草で充分でした。

あの方は間違いなく母さまを受け入れます。お待ちになっておられますわ」



「コジカ・・・では、私の気持ちはどうなる?」



「そんなこと、母さまを見ていれば分かりますわ」



「・・・・」



「空を見上げて、遠い木の葉のことをいつも思っておいででしょう?」



「・・・っ」



「カンクロウ叔父様も、我愛羅叔父様も心配していらっしゃいますわ。

どうぞ、木の葉へお行き下さいませ」



「・・・ありがとう、コジカ。でも私は砂の風影の娘だ。そして風影の姉だ。

自分の気持ちだけに従っていられる立場ではないのだよ」



「でも・・・」



「私は既に砂の為にこの身を捧げると決めたのだから」



「でも、母さまはもうそれから15年以上もの間、砂に奉仕して来られたではありませんか」



「あぁ」



「もう充分ではありませんか。今は私が此処に居ります。もう母さまより強いかもしれませんよ。

それに、此処を発たれる母さまの代わりに、木の葉からここへ姫が嫁いで来られるのです。

日向のお姫様で、ヒナタさまの妹にあたる方が」



「・・ハナビか?」



「えぇ、我愛羅叔父様の許へ。風影さまと木の葉一の名門のお嬢様との婚姻をもって、

砂と木の葉は本当の意味で堅固な同盟国になるのです。

そして、砂からは風姫が木の葉の策士に嫁ぐ。母さまが行かないでどうします?」



「・・・なんと、それは本当か?」



「えぇ、勿論です」



「・・・」



「今頃、上層部で異見審問が行われておりますわ。」







「・・・風影邸へ行ってくる・・」





そう言って、私は家を飛び出した。背後からコジカの声が追いかけて来た。



「頑張って下さいませ、母さま」



その励ましの声は、風に乗ってどこまでも、どこまでも響き続けていた・・・

















001 fin

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