コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。
父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY 「soundfurniture」の すず さま
[prism]
同じところを、行ったり来たり。
何度も、何度も、あたしの足元でせわしなくぐるぐると回る
とても小さな頃に、図鑑で見たことがある。
それは奇妙な性質を持つ。
仲間が発した匂いをたどって移動するのだ。
では、あたしの目の前にたった一匹でいるこの子は
仲間の匂いが、分からなくなってしまったの?
道を外れてしまったの?
それとも、もう帰りたく、ないの?
あたしにはそのどれであっても、どうすることもできないのだけど
でも、もしこの子が、仲間の匂いのしない、知らない土地へいきな
「同じよ、あたしも。」
小さな声で、語りかける。
ひとりで来た訳ではないけれど、でも。
目が、頭が痛い。慣れない樹木の匂い、土の感触に
そして緑が、
頭上を覆い尽くして、呼んでいるみたい、あたしの血を。
その声に耳を澄ましながら、もうひとつ外側のあたしが”ダメだ
あたしの母にとって、木ノ葉の空気に触れることは
それは植物が好きだからだ。
あたしだって、嫌いじゃないけれど。
だけど、
なぜだろう、胸が痛いし、目眩がする。
砂隠れの里を出発したときに、体調に異変はなかったのに。
もしかしたら、
そんなことはないと思いたかったし、考えないようにしていたけれ
それは、”彼”がいると、知っているから。
小さな頃、友達によく言われたことがある。
”かわいそう”と。
お父さんがいなくてかわいそうね、と。
あたしは何不自由なく育ててもらったから、とても幸せなのに。
あたしはみんなに愛してもらったから、かわいそうなんてことはな
だから、
(考えたら、いけないんだ)
きっと、”彼”を見つけることは簡単だ。
写真で顔も知っている。名前も聞いたことがある。
だけどあたしはきっと、知らないふりをするだろう。
会った途端に、泣き出してしまうかもしれない。
(周りの大人みんなが言うように、あたしは母と違って
それでもあたしは、きっと、知らないふりをするだろう。
崩れ落ちそうになるのを堪えて、言うだろう。
『はじめまして。』
*****
「コジカ?」
名前を呼ばれて気がついた。
気を失っていたらしい。
足元を這っていたかわいそうな虫はもういない。
(お迎え、来たのかな)
だといいのだけど。
「行ける?」
「平気です」
答えて、立ち上がる。
どうやら待たせてしまったらしい。
だけど、私の叔父の生徒であった彼女はあたしの出生についても知
「じゃあ、休憩は終わりね」
「休憩?」
あたしは繰り返した。
彼女は、マツリさんは、静かに微笑む。
そうやって、大人のひとはいつも優しい。
だからあたしは、きっと、父親が欲しいなんて考えたらいけないん
母にはちょっと、悪いけれど。
だけど。
出発前に、風影である叔父に言われた言葉が引っ掛かって離れない
”繋がりは、ひとつである必要はない。”
なんのことだか分からなくて、はい、と頷いただけだったその言葉
いつかそれがあたしの言葉と完全に同調したなら、あたしは父に会
そう思いながら、口を開く。
「ずっと、会いたかった。」
前を行くマツリさんの背中越しに初めて行く里を思い描きながら
まだ、そのときじゃない。
これはただの、そう、練習だから。
「会いたいよ。」
それでもあふれてくる涙は、吹く風がそっと拭ってくれた。
まだ知らない彼の手も、この風と同じように温かいのだろうか。
end
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更新履歴&ひとこと
<1/29更新>
松木さまより コジカまんが戴きました!
皆さまのおかげでサイトが潤っております!コジカ作品をお持ちでしたら、ぜひぜひ砂漠の花に水をやってくださいませ〜
nekotemarin@gmail.comまでお待ちしております☆
松木さまより コジカまんが戴きました!
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