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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY 「手毬唄」の滔之碧さま

*死ネタですので、ご了解のうえ閲覧ください

お前を庇って死ぬことはできないかもしれない母親だけれど
、お前を愛し、守ってくれる里のために、私は命を捧げるから。
(砂に埋もれた種にも、水を)

 
 


『この空に、砂に、誓いを』


 
 

「――――お母さんっ!!」



声にならないような悲痛な声で少女は無意識に叫んでいた。



飛び散る鮮血。
黒い布を突き破り少しだけ見える刀の切っ先。そこから滴り落ちる血と紫の液体。



少女の目の前で「母」と呼んだ女が力無くくずおれる。
女が倒れると同時に刀を引き抜いた男は楽しそうにニヤリ…と笑った。



瞬間、少女の背中に氷のような冷たさが滑り落ちる。



逃げなきゃ…!逃げなきゃ殺される!
でも、私一人で?この人はどうするの?まだ息をしてるのに…それに…それに…
―――私の…っ、母親なのに――――!



男が一歩、一歩と近づいて来る中、少女は女と男を交互に見やり後ずさる。



あの人を…母を置いて逃げることは出来ない。
私は生まれてすぐ他人に預けられたけれど、この人は私にこの世界を見せてくれたんだ―――



話したいことだって沢山ある。
出会ったばかりで戸惑って、気恥ずかしくて、殆ど喋れなかったけれど。
大好きな―――母なのだ。



「テ…マリ、さん」



後ずさりながらも女を気にかけ、名を呼んでみる。
それに彼女は反応し指をピクン…と動かした。動かしただけだった。



逃げろ、と。女の指が言っている。
その必死さに彼女の言葉が聞こえる気がした。



逃げろ。お前は生き延びるんだ。



でもそれは逆に私をここに留めた。
逃げなければいけないのは分かっている。
でもこんなにも自分を愛してくれている人を置き去りになんか出来るものか。



「お前もあんなふうになるか?」



男は虫を見るような目で女を一瞥し、次いで私を見てニィッと笑った
振り降ろされた刀を私はただただ傍観するだけで体が動かなかった。
まるで夢に捕われたかのように頭が真っ白になって。



現実に引き戻されて意識がはっきりしたのは金属の打ちあう音のおかげだった。



それは私の背後から飛んできて、目端を擦り抜けた。



私に振り降ろされるはずの切っ先がクナイによって外される。
刀にぶつかったクナイは役目を終え、虚しく地面に転がった。



「コジカ!大丈夫か!?」



振り向くと里の上役に務める男が近くまで走って来ていた。



「バキさん!」



私は不安と安堵のあまり目に涙が溢れそうになったが懸命に堪えた。



「怪我は!?」
「わ、私はありません。でも…テマリ、さんが…」
「ちっ!テマリでもやられたのか!」



バキは元教え子を一瞥して舌打ちをする。



「とにかくお前はテマリを連れて逃げろ!あとは俺がやる!」
「あ…は、はい!」



少女は急いで女の元まで駆け寄り彼女の腕を肩に回した。
里に向かって駆けていたのだが女は敵から少し離れた所で「止まれ」と小さく呟いた。



「で、でも早く治療しないと…」
「は…急所は外したからな…傷だけなら…里まで持つだろうが…分かっているだろう…?毒が回っている…即効性がない毒みたいだから今も話していられるが…もう体の感覚はない…里までは無理だろう…止まれ…っ」
「嫌です!諦めたら終わりなんですよ!?もしかしたら助かるかもしれな―――」
「聞き分けろ!!」



苦し紛れの彼女の怒声に私はビクンッ!と足を止めてしまった。



「忍なら…最期を見極めることも大切だぞ…」



そういって女は笑った。
まるで子供を諭すように優しく、柔らかく。
私は突き付けられた現実を受け入れたくなくて、でも受け入れなくてはいけなくて、我慢していた涙を抵抗することなく流した。



女は困ったように微笑み、微かに震えながら懸命に腕を動かし少女の頬に伝ったものを拭う。



「聞け…」



それから女は…母はゆっくりと話し始めた。



お前に出会えて本当に嬉しかった。
お前にはつらい想いをさせたかもしれないがお前を産んでよかったと思う。
里にお前と会うことを許されて、お前と話して…
ぎこちなかったけど、凄く幸せだったんだ。
 

さっき「母」と初めて呼んでくれたな。
どれだけその言葉に救われたか…どれだけ嬉しかったか…わかるか?
ふふ…わからないよな…
 

私な…お前のためには死ねないって思ってたんだ。
かわりにお前の生きる里に命を捧げるって決めていた。
だけど…里のための戦いで…お前を庇って死ねるんだな…って私らしくないことを思ったよ。
 

なぁ…一つだけ頼みがあるんだ。
お前はこれからいろんな奴に出会うだろう。
そして木の葉に行ったときには、もしかしたらあいつに会うかもしれない。
そうしたら…笑ってやってくれないか?
あいつは今も何処かをさ迷っているかもしれない…
もしかしたら居場所を見つけたかもしれない…
でもお前に会ったら少なくともあいつは動揺すると思う。昔から結構脆いからな…
お前が笑ってやればあいつの心も軽くなるはずだ。私が母と呼ばれた時みたいに…



「頼んだ…お前の母になれたことを、お前に母と呼ばれたことを誇りに思う…コジカ―――」



そう言って母は口を閉ざし、永遠の眠りについた。



「お母…さん」



私は立ち上がり空を見上げた。
最後に流れ落ちた涙が乾いた砂に消えるように染み込む。



強くならなくては。
この母のように誇り高く生きて。
そしていつか、父親に笑って会えるようにならなくては。今までのことを背負って――――



今、この時。
近い将来、砂漠の花と呼ばれることになろう少女は突き抜ける空にそう誓った。



乾いた砂に落ちた水。
そこから芽が出て美しい花が咲くだろう。
強く、逞しい――――


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