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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY 「インダストリアル」のカエさま




まだキレイなままの 雪の絨毯に 二人で刻む 足跡の平行線

 

こんな夢物語 叶わなくたって

 

笑顔はこぼれてくる

 

雪の無い道に

 




 

「スノースマイル」

 




 

今日、俺の最後の冬だった。

 

 

「先輩」

「何」

「明日で最後なんスよね」

「それじゃわかんない 主語」

 

「何がって               暗部の仕事。」

 

明日で彼女は暗部をやめる

 

「・・・・そうよ」

 

彼女はそう言って面をはずした

翡翠の瞳がどこかに向けられている

俺を見ることもなく 空を見ることもなく 



透明な場所から何か見つけ出そうとでもするように



それは定まっておらず、一方で強い色をしていた

俺に、見えないだけなのかな

 

俺も面をはずした  



青い空に浮かぶ太陽が目に刺さり俺の視界の邪魔をした 



彼女が見たいもの、 俺が見えないだけなのかな

 

「クレバ」

 

彼女は俺の名を呼んだ 



本名を知っているのは俺の一族と彼女だけだった

音のない道に響くこともなく 一瞬にしてそれは消えてゆく

「今度からはクレバが後輩引っ張るのよ」

「・・・・はい」

「・・・・やる気ないでしょ」

「ありますよ、一応」

「一応、ねぇ」

やっと彼女はこちらを向いた 今度は翡翠の目が、俺の目に刺さった 



まっすぐで、強くて、綺麗な、翡翠。





そのまわりの白い肌は、季節外れの真冬の雪のようだった

雪のように、それは冷たかった   雪のように、それは静かに光を放っていた

 

 

俺の部屋で、二人で最後の朝を迎えた

ベットから上半身を突き放すようにして飛び起きると



彼女はワンピースを着て窓辺に立っていた

「起きるの遅い」

そう言った

 

これが、最後の朝なのに。 これで、もう終わるのに。

いつもどおりの朝。

最後と分かっているのに、またこうやって明日の朝が迎えられる気がした

明日も、その俺と真逆の黒髪が、綺麗な翡翠の瞳が




まだ俺と一緒にいてくれる気がするんだ

そうあって、ほしいんだ

 

「髪、はねてる」

そして俺の隣に来てはねた部分を押さえた

「綺麗な金髪」

俺の髪を握ってそう言った どこが、どこが?何で? そう言いたいくらいだった 




俺は金髪で黒目。 幼いころから思っていたがおかしい。

ホントは親父みたいなので良かったのに。

 

 

「先輩 もう行くの」

「ああ もうちょっとしたら、ね」

 

もう、彼女はここからいなくなる 彼女は、ここを去っていく

でも、怖くないし、怖がっていられない   



自慢じゃないが、彼女と長い間こうしてきたから、



彼女の望むものは、もう大体知ってる

 

彼女が望むもの

引き止められないこと 自由に自分で自分の生き方を考えること。 



自分のことを、忘れてもらうこと。

 

俺だって。

このまま彼女にすがりついてられない 自立、しなけりゃならない

 

もっと、自分で強くなっていかなければならない。

最後に見送りぐらいは、やっていいだろ?

 

 

彼女はいつもより飛び跳ねるように、落ち着きの無い歩き方をした

喜んでいるのか、悲しみを紛らわそうとしているのか




そのうちのどちらかだろう。

とにかく無邪気で何かに満ちたような動きで。

 

まるで静かに降り積もる雪のようで。

 

実際俺は雪を見たことが無いが、




写真を見せてもらったり話を聞かせてくれたことがある

白くて冷たくて、降ってくるとまわりの視線を奪い取っていって。

それは柔らかく、優しく、一方で硬く、恐ろしい

彼女はそうだった 全部そうだった

 

「クレバ」

「はい」

「あんたは 何も言わないんだね」

怒られるのか?やっぱり、俺は彼女のことひとつも分かってなかったのか?

 

「大きくなったね」

 

半分困ったような、戸惑いの色を混ぜたような笑顔を、俺に見せた 




複雑に絡んでできたような笑顔。

俺は、この笑顔に支えられて、やっとここまでこれたんだ

 

「それじゃ、行くから」

「え、ちょ

「何も、言うな」

 

彼女はいつもの淡々とした口調で、俺に言い捨てた 




  俺の言葉を聞かずに、ひとりで歩いていった

 

言いたかったこと そんなの分かってくれてるんだろ?




     言おうとしたのに。 彼女は無視した

あの震える肩に向かって、もう俺は何も言ってやれなかった

 

俺は彼女の跡を頭の中に残したくない




 彼女の頭の中に俺の跡を残したくない

正確に言えば、跡など残してはいけないのだ。

俺らは、ただの『木ノ葉の暗部の先輩、後輩』という関係しかないのだから。

一緒に朝を迎えることも何度もあったけど、俺は彼女に何も言えずに終わった




 だからその関係しかないし、

第一本来彼女は砂の人間だ



   人材不足だといって連れてこられただけで、最初はまったくの赤の他人だ 




そしてもう、赤の他人として考えることを求められてる

 

つながるわけなかったのに  俺は彼女のこと、いつか求めていた

 

もう、跡なんて残す必要も無い

 

それでいい、嫌でもそれしかなす術が無い

 

冷たい雪が去って、太陽が顔を覗かせた



 音もなく感情もなく未練もなく、淡々と最後の冬は終わった

無邪気な雪は溶け、いつしか水になりどこかに流れていった




  もう、跡形もなく。

 

 

「先輩」

「ん?」

「任務、終了しました」

「そうか」

 

俺は『先輩』になった

冬の嵐が去ると、今度は平凡な日々が続いた

 

赤を浴びて、毎日が通り過ぎていった

でもそれが普通だった それだけが生きている証になった

 

あの人と歩いた道を歩くと、自然と笑えてくる

やっぱり消し去れなかった記憶が、彼女の全てが、



まだ俺の仲の何かを凍りつけている

 

 

先輩、今のあんたの瞳は何色? あんたなりの、幸せな生活を送ってる?

俺は今、ここで生きてる 呼吸してる

あんたがいなくなっても、俺は俺なりにこの平凡な生活をやっていってる

それなりには楽しいし、それなりはいい人生だと思ってる

 

あと、あんたを失くしてようやく分かった    ようやく、同じになれた




     俺も見えない何かを探すようになった

なのにごめんな、何もやってやれてなかったよな、俺。

 

「コジカ」

呼んではいけない名を、呼び捨てにして。

 

ごめん、今も昔も何もできてねぇ 生意気なままでさ  なのにおつかれさま 




俺と一緒にやっていけるの、今考えたらすごいぜ?

 

失くして、気づくことってあるんだな、やっぱり。

失くしたものは大きかったけど、まだ得たのは小さいものばかりだけど、




心配はいらないみたい 俺はちゃんと先輩として働けてます

だから、今は自分のことだけでいいんだ 




他なら今見つけた、素敵な人間のことでも心配しとけ

あんたはあんたのことだけでいい、あんたの道を逝けばいい

 

見えない雪を探して、俺はいろいろ思ってる




 いつかまたここに冬が来ないか、無謀なことばっか期待してるけど。

戦闘のスキルはちゃんとあがったから。

 

 

 

 

 

 

彼女と歩いた道を、ひとりで歩く

 

まだ消えることを許してもらえなかった、何年か前の二列の平行線を辿る

 

降り出した雨にその平行線が打たれ、どんどん歪んでいく

 

でもその線が、ふたつに交じることはなかった ひとつには、なれなかった

 

目の周りが熱くなる現象を、俺は初めて体で覚えた

 

あんたなら、こんな俺の姿さえも、笑顔で見るんだろ?どうせ。





 冷たい、でも温かい、矛盾した笑顔すんだろ?

 

 

 

 

ねぇ     なんで

 

 

雪は降らないの


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