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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY CoWさま










[Star Catcher]









「私は何があっても産む。」

そうテマリが砂隠れの会議室で幹部連中に言ったのは、
もう数年前のことじゃん。
あれからテマリは、国境沿いの長期警備と言う名の軟禁を
受け入れることを条件に子どもを産んだ。
そして、子どもが乳離れした後は、砂隠れの里で育てることも受け入れた。
この条件でも厳しいものだが、外交上の問題としては大きな問題が
これで収まったのだから子どもを取り上げられ、
テマリ自身が軟禁という処罰を与えられても易く考えることはできない。
もちろん我愛羅も尽力した。
だが、木の葉の外交をほぼ統べる者と砂隠れの先代風影の長女であり、
現風影の姉である立場の二人から発した突発的で大きな問題に、
幹部が下した決定よりいい条件を整えてやることができなかった。

「・・・俺なんてもっと何もできなかったじゃん。」

俺ができたことといえば、里の幹部連中が養育するのを何とか阻止して、
自分がテマリの代わりに子どもを育てるということだけだった。
案の定、幹部からは無数の批判を受けたが、同じ血が色濃く流れている者が
育てるべきだという意見を俺は貫いた。
もし、幹部連中の養育係に育てさせていたら、テマリの存在なんてないままに
育てられるのが見えていたからな。
コジカが、テマリの手を離れて俺の手元に来たときには、
母親のテマリに似たのか赤ん坊のくせに肝が据わっていて、
俺がどんなにあやして受け取ろうとしても、
テマリの腕から頑として離れようとしなかった。

俺はその時、なぜか漠然とコジカは優秀な忍になるだろうと、感じた。



実の姉弟である俺でさえ、あれ以来・・・
コジカをテマリから受け取った時以来、テマリとほとんど会っていない。
数回、忍びらしく忍んで国境沿いに会いに行ったくらいだ。
我愛羅なんて幹部連中との会議が最後で、後は近況報告を聞くくらい。
実の姉と姪を一緒に暮らさせてやれない悔しさは、
きっと俺以上に我愛羅は感じているはずだ。
俺でさえほとんど母親のことなんて覚えちゃいない。
我愛羅なんて全く覚えていないだろうが、
母親や他人からもらう愛情の大切さは誰よりもよく我愛羅は知ってる。
コジカは、いつ・・・両親からの愛情をもらえるだろうか。

―――――――――――――――――――――――――――――

「よ!久しぶりじゃん。元気そうだな。」
「当たり前だ、体調管理は忍の基本だぞ。」

俺は久しぶりにテマリに会いにきた。
2年半ぶりの再会だが、あっさりとした再会だ。
テマリは相変わらず負けん気な口調も変わっていないし、
産後の人間にしては引き締まっている体型を維持している。

「土産があるじゃん、ほらよ。」

俺は持ってきた荷物の中から、テマリへの土産に分けた袋を渡す。
その中には我愛羅からの手紙と砂で作った小さな扇子の置物や、
バキ先生からの甘栗など、内容は様々だがテマリのことを想って
用意した品ばかりだった。

「俺からはこれじゃん。」

そう言って俺が封筒を渡すと、テマリはいぶかしげに封筒を眺めて、
なかなか封を開けようとしない。

「・・・別に変なもの入れてねぇじゃん!」
「いや・・・この分厚さは、明らかに普通じゃないぞ。」
「まぁ、たしかに少し入れすぎたかもしれねぇけど。」

そう、本当はもっと入れたかったが、
封筒に入るだけに厳選して入れてきたのだ。
それはコジカの成長記録という名の写真だった。
幹部連中は写真の流出を恐れて写真を撮ることを嫌がるが、
俺からしてみれば大事な姪っ子の大事な成長記録だ。
それにテマリにコジカの成長を知ってもらうためには、
これが一番手っ取り早くて分かりやすい方法じゃん。

「大きくなったな・・・。」

テマリは暫く十数枚の写真を見たあと、そう呟いた。
本来ならば母親であるテマリの元で育つはずだったコジカ。
大事な娘の成長を写真と言う静止画でしか見守れないテマリ。
なぜこの母子はこんなにも酷な生き方をしなければいけないのか。
それを考え出すととまらないのは、
何度となく考えてきた俺にもわかっているが、
何度考えてもこの母子をどうにかともに暮らせさてあげたいという気持ちが、
俺の中でいつも堂々巡りをしている。
アイツなら・・・。
コジカの父親なら何かいい策を考えられるのだろうか。

「カンクロウ!おい!聞いてるのか!?」

テマリから話しかけられているのにも気づかなかった俺は、
慌ててテマリに謝った。

「全く昔から変わってないな、人の話を上の空で聞きやがって。」
「悪ぃ悪ぃ、ちょっと考え事してたじゃん。」
「・・・里に置いてきたコジカのことか?」

テマリは少し間をおいた後、俺に対して初めてコジカの話題を振ってきた。
今までは俺が一方的にコジカの成長を告げるだけだったのに、
テマリ自らコジカの話題に触れたことに俺は内心驚いていた。

「・・・珍しいじゃん、気になるか?」
「まぁな。というより、

お前がコジカの養育係をしてくれているのは嬉しいが、
コジカに変なことを吹き込んでいないかと思うと、気になって仕方ない。」
そう言ってテマリは柔らかく笑った。
俺はコジカを本当に大事に育てていることや、
いたずらの上手な方法などのテマリの言う『変なこと』は、
たまに教える程度で実践には至っていないことを伝えた。

「第一、コジカは最初こそいたずらにも傀儡にも興味もったけど、
チャクラ糸出すのがじれったいみたいですぐ興味が失せたみたいじゃん。」
「チャクラ糸を出そうとしたのか!?」
「まぁな、3歳半くらいのときかな。今は違うじゃん。」
「・・・『今は』って何だ?」

コジカはまだ幼いが、忍びとしてのセンスがあると俺は思う。
チャクラ糸を出すにはまず指先にチャクラを集める練習から始めるが、
コジカはたったの3歳半で右手の人差し指に微弱だが集めて見せた。
それを見たときは本当に驚いたし、久しぶりに見た傀儡の天才児だと思い、
本気で傀儡の術を教えようかとも思った。
しかし傀儡の術は、練習の段階でかなりの辛抱強さと根気が要求される。
そのためか傀儡の術のもう一つ上の段階を教えようとしたら、
いったい誰に似たのかコジカはあっという間に興味をなくした。
『傀儡の術、めんどくさい!他のがいいー!』
誰に似たのかは何となく想像できたが、コジカはそれ以来、
自分にはどんな忍術が合っているのかをずっと試してきた。
そして今、興味をもっているのが・・・。

「“風”じゃん。」
「風・・・って、まさか。」
「そう、テマリが・・・お前の母親は“風使い”って教えたんじゃん。」
「なっ!幹部連中は!?」
「別に何も。砂の里に風使いがいるのは、普通じゃん。
それに調べてみたら、コジカの属性は風だった。」

コジカは風の属性を持つということが分かったのは、今からほぼ2年前のこと。
もちろん木の葉に行けば、父親の方の秘伝忍術を継ぐ属性を持っているのか、
調べることができるだろうが、まだ下忍でもないコジカを国外に出すことは、
危険すぎる上、属性を調べるために木の葉に行けば一気にコジカの存在が、
明るみに出てしまう。
コジカが父親の話をしてもはっきり理解できるようになったら、
その時は全てをコジカに話す約束になっている。
それまでコジカは、母親を想像してもらいながら風を戯れていてもらうのが
いいだろう、と俺と我愛羅、そしてテマリは結論を出した。

「写真にもあるだろ、一生懸命空に手をのばしてるのが。」
「どれだ・・・コレ、か?」
「そうそう、頑張ってるだろ?」
「あぁ、まるで昔の私みたいだ。」
「カメラ撮ってる俺に向かって手を伸ばして駆け寄ってきてる写真、分かるか?」

その写真は風を掴めない自分に腹が立って、
半泣きになりながら練習しているときのものだ。
コジカは自分の母親が風使いだと知ると、
傀儡の術のときとは比べ物にならないほど、
遊ぶ暇を惜しんで一生懸命に練習し始めた。
時には我愛羅やバキ先生に質問に行ったり、
その負けず嫌いで何事にも一生懸命に取り組む姿は、
昔のテマリを見ているようだった。
テマリは風、俺は傀儡、我愛羅は砂。
俺達姉弟は、それぞれ違う忍具を扱ってきたが、
テマリの風はなかなか手強く、テマリは自由に操れるようになるまで、
かなりの時間をかけて必死に鍛錬を重ねてきた。
コジカも今、幼い頃のテマリのように頑張っている。
風になびく髪の毛は、父親譲りの漆黒だが、
風を見る瞳は、本当に昔のテマリそっくりで驚く。
まだ6歳だというのに、『風をつかむまで家に帰らない』といって聞かない。
全く俺は今も昔も翡翠色の瞳に、苦労させられっぱなしじゃん。

「これ・・・。」
「ん?どうしたじゃん?」
「いや・・・コジカは、きっと風をつかむぞ、カンクロウ。」
「何で言い切れんじゃん?」
「ここを見てみろ。」

そう言われて受け取った写真は、さっき俺がテマリに言った写真で、
コジカが半べそかきながら俺に手を伸ばして歩いてくる写真だった。

「これのどこ見ろってんじゃん?」
「手のひらだよ。」
「手のひら?」

めいいっぱい開いているこの写真でも、写真のコジカの手のひらは小さい。
この小さな手のひらのどこを見ると言うのだろう。
全然分からんねーじゃん。

「ここだ。」

そう言ってテマリが指差したコジカの手のひらには、
小さな手に小さな小さな“ほくろ”がついているのが見えた。

「ほくろ・・・がどうしたんじゃん?」
「知らないのか?手のひらにほくろがある者は、生まれて来るときに
星をつかんだ者だって言われてるんだぞ。」
「へー・・・星ねぇ。」
「星・・・コジカは星(うんめい)さえもつかむ女だ。
風だって直につかむだろう・・・風の方から近寄ってくるかもしれない。」

テマリは俺を見て微笑みながらそう言った。
・・・そういえば聞いたことがあるじゃん。
誰かも手のひらにほくろがあると言う話になって、
なぜ風影室だったかは忘れたがそこで、ほくろについてテマリが話していた。

『アイツは手のひらにほくろがある。生まれながらの強運の持ち主だ。』

そう言って笑っていた・・・。
あぁ、思い出した。
木の葉からアイツが使者として風影室に来たときだ。
アイツが帰った後に砂嵐がひどくなったから、
姉弟三人で帰りの道中を案じていた時に話してたじゃん。

「・・・アイツと一緒じゃん。」
「あぁ、そうだな。」

そう言って、テマリは今日、俺が見た中で一番、穏やかな微笑を浮かべた。

気づくと滞在期間が長引いていた。
積もる話はあるが、俺には我愛羅に任せているコジカの世話や、
自分の忍としての任務などテマリとの時間を過ごしてばかりはいられない事情が、山積みになっているせいで、里に早く戻らなければならない。

「じゃぁ、俺帰るけど、コジカに何か伝えることあるか?」
「いや、いい。コジカを頼む。」
「あぁ、もちろん分かってんじゃん。」
「そうだ、コジカにほくろのこと教えてやってくれ。」
「・・・アイツのこと知ることになってもいいのか?」
「少しくらい構わない、もうコジカも6歳だ。」

コジカには父親のことはほとんど話していない。
きっとコジカが知っているのは、父親と自分が同じ髪の色だということだけ。
両親のことをほとんど話していないのは、テマリの意向だ。
それを今日緩めたということは、テマリが何か変化があったからに違いない。

「ただし、シカマルにはコジカのことは言うなよ。
一旦里に戻ってすぐ木の葉に行くんだろう?」
「まぁな、分かってるじゃん。
じゃ、俺急ぐわ。」
「気をつけるんだぞ、カンクロウ。」
「あぁ、テマリもまた来るときまで、元気でいろよ。
今度はたくさんお土産持ってきてやるよ。」

俺は笑いながらテマリに言うと帰り支度を本格的に始めた。
帰り支度と言っても、広げた荷物の中から持って帰るものを
袋の中に入れるだけだが。

「すまないな、こんな所まで来てもらって。」
「こんくらいどうってことねぇじゃん。
それよりちゃんと三食食ってたっぷり寝とくじゃん。」
「ッ、ハハハ。」
「何で笑うんじゃん・・・?」
「いや、コジカにもこんな風に接しているのかと思うと、面白くてな。」
「はっ!コジカは俺のおかげでいい子に育ってるじゃん!」
「あぁ、カンクロウだから間違いない。コジカを頼む。
あと念を押すようだが、アイツには、コジカのことは絶対言うなよ。」
「分かってる。じゃぁな。」

―――――――――――――――――――――――

テマリは最後までアイツからコジカを遠ざけた。
コジカを大事に育てている身としては、
自分が養育係をするのではなく本当の父親か母親が育てるのが、
一番コジカのためにいいと思う。
しかしテマリは幹部連中の気が済むまで、砂隠れの里のはずれで軟禁状態だ。
軟禁といっても国境警備を兼ねてるから、もし敵が攻めてきたら最前線で戦うことになる。
そこであわよくば命を落としてもらうのが幹部連中の狙いかもしれない。
でもテマリはそんなことで死ぬような女じゃねぇじゃん。
父親の方は・・・全くコジカの存在すら知らない。
いつコジカがアイツと出会うかは分からないが、
出会えたのであれば・・・その時は父子として話してほしい。


「チッ、砂嵐じゃん。」

これから里に帰って我愛羅にテマリの様子を報告した後すぐ、
木の葉に発たなければならない。
夜の闇にまぎれてテマリのところに行ったが、
もう今は太陽がすべて顔を出している。
木の葉に行くには3日間かかる。
風影室に行ったらまずコジカの相手をしてご機嫌をとってから、
木の葉にいくことにしよう。
木の葉に行ったら1週間は帰って来れないからな。

――――――――――――――――――――――

「よっ、元気そうじゃん。」
「ども、まぁまぁっすよ。」
「そのわりに今日はかなり早いお着きじゃん?」
「カンクロウさんこそ早いんじゃないっすか。」

―俺、今日はかなり早めに出たと思ったんすけどね。

そういいながら、けだるそうな雰囲気の男は俺の足を火影邸へと促した。
あれから・・・テマリが行なっていた外交任務は、すべて俺が引き受けた。
だから木の葉にも、2ヶ月に一回は来ていることになる。
テマリが担当していた頃と変わらずに、今でも木の葉の外交担当は奈良のままだ。

「今回は長引きそうなんで、長期で宿とってます。」
「あぁ、悪ぃじゃん。」
「・・・早く帰らなくていいんすか?」

いつもの俺なら

『大事なのが俺を待ってるから。』

と言って強行してでも早く帰ろうとするせいか、
いつもと違う俺を察してか、奈良が俺をじーっと見てくる。
相変わらず頭のキレはいいみたいじゃん。

「まぁな、今回はずっと我愛羅が見てくれてるからな。」
「風影様が・・・大丈夫なんすか?」


―アイツには、コジカのことは絶対言うなよ。


「な、何でじゃん?」
「いや・・・風影様って、栽培とか慣れてなさそうなんで。」
「栽培?・・・何のことじゃん?」
「・・・術に使う薬草のことじゃないんすか?」

こいつは頭がいい分、ある意味鈍感なところを持っているのかもしれない。
幸い、コジカのことも深く追求せずに簡単に話をあわせるだけで切り抜けられた。
我愛羅には砂の里に帰った後、口裏を合わせておかないとじゃん。
コジカの頑固さは、テマリゆずりだろう。
コジカが生まれてもう6年も経つのに、こいつは自分の娘のことを
知らないまま日常を過ごしている。
親であることを突然知らされたら、こいつでも驚くのだろうか。
テマリが頑として、シカマルに自分のことやコジカのことを
耳に入れないようする気持ちは分かる。
だが、男として言わせてもらうと、好きだった女が・・・。
ましてや肉体関係まで持っていた女が、ぷっつりといなくなったら
余計に気になってなかなか諦められないものではないだろうか。

隣であくびをかみ殺している男は、コジカと同様、星を掴む男。
きっと2人は近い将来、出会うだろう。
星に導かれて。
星同士が出会い、運命が交錯したとき、運命は大きく変わるかもしれない。
いつか・・・この隣にいる男と、この男が愛した女。
そして、今俺が一生懸命育てている子ども。
この3人が家庭を持つ日が訪れるかもしれない。
そのときは家族写真をとってやろう、全員が同じ写真に入っているものを。
今は別々の場所で、違うフレームの中にいる3人だが、
いつか同じ場所で幸せに暮らさせてあげたい。
それまでは俺が責任もってコジカを育ててやるじゃん。
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