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コジカ。登録番号:不明。母:砂隠れのテマリ。 父:不明(一説によれば木の葉隠れの外交官)。
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BY あくあく









コジカへ

木の葉にいる、お前の父親の顔だ。
やや阿呆面だが、よく切れる男だ。
今まで伝えずにいた私を許せとは言わない。
ただ覚えていて欲しい。お前は愛されて産まれた子で、
私達の子であると同時に、砂隠れの子なのだと。
私はお前の  母親であることを、誇りに思う。

砂隠れのテマリ







[Dear My Darlin’]







12歳になる年の元旦に、あたしは初めて父様の顔を知りました。



「下忍10班のコジカです。新年明けましておめでとうございます、風影様」

砂隠れの里では、毎年のお正月に、忍全員が風影様にご挨拶をします。ご挨拶するのは班の皆と一緒だけれど、風影様はあたしたちみたいな下忍にもひとりひとり声をかけてくださいます。

あたしにとっては叔父様にあたる人を、普段は「風影様」と呼ばなければいけないことにも、もう慣れました。最初はヘンだったけど。

「……今年は、中忍試験を受けるんだったな。修行は順調か?」
「はい、班の皆と一緒に中忍となれるように、頑張ってます」
「そうか」

皆と一緒に、とあたしが言うと、風影様はとても穏やかそうに笑いました。風影様は、里の人達をとても大切にする方で、たまにお屋敷に遊びに行くといつも「仲間の信頼を得て、繋がりを守れてこそ一流の忍だ」と教えてくれるのです。9つで忍になって、今はもう凄く難しい任務にも同行させて貰っているけど、昇格試験をなかなか受けさせてもらえなかったのも、そんな理由で。



「お前は何も悪くない。だからお前の両親について何か言うものがいても気にするな。くだらない喧嘩を買っても、損をするのはコジカだ」

昔、我愛羅叔父様はそう言いました。

「忍として立派に過ごせ。仲間を守れ。そうすれば信頼は自ずから得られる」
「あたしの悪口を言う人も、守るの?」
「そうだ」
「でも……悔しいです。あたしは……」
「大丈夫だ、コジカなら出来る」

絨毯の上で膝を抱えてグズっていたあたしは、ソファに座る叔父さまを見上げました。叔父さまはいつも通りの真剣な面持ちで、真直ぐにあたしを見ていました。そして静かに笑いました。

「オレにも出来たのだから」

……それから我愛羅叔父様は、昔の話をしてくださいました。下忍だったころのご苦労を、たくさん、たくさん。

だから、あたしも陰口に負けないくらいの信頼を築いてから、中忍になると決めたのです。班の仲間たちと一緒に、頑張って修行をしてきたのです。父の顔を知らないあたしの悪口を言う大人も、風影様の親戚だから贔屓されてるとか言う同期のコも、あたしはもう気にしません。

気にするのを、やめたんです。だって面倒なだけですから。



「今年の会場は何処だったか」
「木の葉隠れの里です。大丈夫ですよ、このコたちなら問題なく」
「そうか。だが、あまり気負わないように」
「ありがとうございます! ほら、アンタ達、風影様に御礼は? 次の班が待ってるんだから、急ぎなさい!」

マツリ先生の言葉に、あたしたちは並んで頭を下げました。

今年も頑張りますね、我愛羅叔父様。じゃなかった、風影様。



「よ、コジカ」

風影様のお部屋を出たあたしたちを、カンクロウ叔父様が呼び止めました。

母様と離れて暮らすあたしに、叔父様たちはとてもよくしてくださいます。あたしを育ててくれてるカンクロウ叔父様も優しいです。

「マツリ、コジカ借りてってもいいか? テマリが帰って来てるんじゃん」
「あ、はい! コジカ、じゃあ明後日の任務、遅れないようにね」

カンクロウ叔父様の言葉に、あたしはドキドキしました。毎年、風影様のお誕生日にお正月、あとは夏の御霊送りの儀くらいでしか母様に会える機会はないから。母様は風の国のお城でお勤めをしています。大名様のご家族を守る、大事な任務をずっと続けています。里にはたまにしか戻ってこれないけど、とても強くて美人で格好良い母は、あたしの自慢です。



風影様のお屋敷の一室で、母様はあたしを待っていました。

「母様」

窓から空を見上げていた金髪の後ろ姿が、あたしの声を聞いて振り向きます。キレイな髪の色。母様があたしを見つけて、にこりと微笑みます。

「ひさしぶりだね。また、大きくなった」
「母様も、お元気そう」
「堅苦しい物言い」

母様はくすりと笑いました。いつもカンクロウ叔父様を「お前、躾はびっくりするぐらいマトモなんだな。自分はじゃんじゃん言ってるくせに」とからかっているんです。

あたしは、母様にいろいろなことを伝えました。任務で外国に行ったこと、風の術を一生懸命練習していること、母様と同じように扇子(あたしのは普通サイズで、どちらかというと幻術の道具だけど)を使った術に挑戦していること。

それから、今年、中忍試験を受けること。

「我愛羅とカンクロウから聞いたよ。試験を受けるって」
「一回で合格するのはすごく難しいから、無理するなって言われます」
「そうだね、母さんも合格したのは2回目だった。でも」
「?」
「コジカなら、大丈夫じゃないかな」

母さんはそう言って、小物入れから黄ばんだ封筒を取り出しました。どこかで見覚えがある形と色合い。そういえばカンクロウ叔父様が大事そうに仕舞っていた封筒に似ているような、気がします。

「もう12歳だし、今年、木の葉に行くならいい機会だから」

あたしは渡された封筒と、母の顔を見比べました。お年玉ではないようです。開けて良いよ、と母が目で合図したので、閉じられた封を切ります。


中から滑り落ちたのは、一葉の写真でした。


古ぼけているけれど桃色とわかる花びらが散って、その中に、男の人が立っていました。今のあたしよりいくつ年上でしょうか。緑が綺麗だから、きっと外国のはず。よく見ると、男の人の袖には木の葉隠れの額宛が縫い付けてあります。なんだかやる気のなさそうな顔つきをした、忍です。

「裏側」

言われるがままに、写真を裏返してみました。何かが墨で記されています。達筆……これは、母様の字。もう掠れかけた字をあたしは一生懸命追って……。


あたしは、はっと母様の顔を見上げました。

「木の葉隠れの上忍で、奈良、シカマルという名だ。母さんが外交任務でよく木の葉の里に行っていた時に、あんたが産まれた」
「……父様は死んでしまったのだと」
「ごめんね、本当のことを言わないでいて。同盟国とはいえ、外国の忍と一緒にはなれなかった。だから、隠さなきゃいけなかった」

母様はあたしのほうへと手を伸ばして、そっと頭を撫でてくれました。

「中忍試験できっと、お前はあいつに会うんだね」
「父様に」
「コジカと同じ、綺麗な色の髪をしてるよ」
「……父、様」

こらえていたつもりもなかったのに、涙が、不思議と頬を伝いました。

「忍がそんな簡単に泣いちゃダメだ」

うつむいて眼をごしごしと拭うあたしを、母様は叱りました。あまり会えないけれど、母様があたしを甘やかしたことはありません。

「……泣き虫だな、コジカは」

けれど、そう呟く母様の声は。
どことなく、嬉しそうなのでしたーーーー。
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